第3回 黒船人事マンが見た『国内外のグローバル人材育成の現状』

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組織パフォーマンス向上「グローバル・ビジネスリーダー」

グラマシー エンゲージメント グループ株式会社 代表取締役
グローバル組織人事コンサルタント
ブライアン シャーマン(Bryan Sherman) 2011年12月7日

2011年10月27日、弊社ニューチャーネットワークスは、グローバルエイジ研究会の公開シンポジウムを開催いたしました。本コラムは、シンポジウムにて「黒船人事マンが見た『国内外のグローバル人材育成の現状』~英語を勉強せずにグローバル人材になれないという神話~」と題するブライアン シャーマン様の講演録を(ご本人の許可をいただき)掲載させていただきました。
 
ニューチャーネットワークス 程塚 正史

  

皆さん、こんにちは。私はブライアン シャーマンと申します。本日、限られた時間ではありますが、皆様に色々なお話させていただきたいと思います。まず、自己紹介の前に、今回お招きいただいたことへのお礼を申し上げたいと思います。お話を頂いた当初はこのような優秀な方達がお集まりだと思わなかったので、先程からここに座りながら、徐々に緊張が高まってきました。最初は全く緊張がなかったのですが…。それでは皆さん、今日は「一期一会」という事で宜しくお願いいたします。ちなみに「一期一会」は私の大好きな言葉です。

それでは、あらためて自己紹介させて頂きます。ご覧の通り、私は日本人ではございません。ニューヨーク出身のアメリカ人です。私がいつも自己紹介をする際には、3つの事柄について話します。1つ目は、私はビジネスマンであり、自身の会社を経営しているという事。2つ目は人事専門家であるという事。3つ目は、日本語を含めた日本の様々な文化について勉強したという事です。本日は、ビジネスを進めていく上で、自分が本当に伝えたい事は何か?という観点に立ち、世界で通用する人材の育成についてのお話ししようと思います。私は今「外国人」として、皆様の前でお話しておりますが、「外国人」のブライアンという人間ではなく、日本や海外の人事を見てきた人間としてお聞き頂ければ幸いです。

本日のテーマは、「グローバル人材」という事ですが、まずは、「英語を勉強しないと、グローバル人材にはなれないのか?」そして「本当に英語は大事か?」という観点からお話を始めさせていただきます。結論から申し上げますと、ポイントは3つあります。

まず、第一のポイントは、企業がグローバルなイノベーションを起こすために、企業の強み、ミッション、ビジョンを、戦略と共に、人材育成の視点からも明確にすることです。私が人事のコンサルタントとして、日本企業の皆様とお話しする機会がありますが、多くの人事部の方々が、この点に非常に頭を悩ませています。
例えば「グローバル化は良いが、それでは我々はどうすればよいのか?どこから話を始めればいいのか?」といった具合です。企業の強み、ミッション、ビジョンを共有する以前の問題点として挙がるのが、「英語という言語に対しどのように対応すべきか」、また同様に「異文化に対してどのように対応すべきか」という点に、各企業が非常に苦慮されています。それでは異文化とはいったい何なのでしょうか?私は、「異文化を理解すればグローバルなビジネスができる」と考えています。実は以前、グローバル人材の育成というテーマで6か月間の研修プログラムを実施した事がありました。参加者は中間管理職が中心で、プログラムの中では「グローバル人材とはどのような人だろうか?」というテーマで議論をしたのですが、最終的に、「我々ではないだろう。グローバル人材というのは、これから会社に入る、英語が分かる人だろう」という結論になりました。つまり、彼らは「グローバル人材とは我々のことではない」という考え方を持っているのです。このような考えを持つ日本人が多いのではないかと感じています。このような考えが、イノベーションを推進する企業内において、問題になっているのではないかと思います。グローバル人材は、英語が理解できる人ではなく、自社のミッション・ビジョンを異文化の人に理解してもらい、共有できる人なのです。

第二のポイントは、「ディベロップ・リーダーズ/グローバル・リーダーズ」です。今、流行りの言葉で言えば、タレント・マネジメントという事です。これは、研修・イベントなどを意味するものではなく、人事のプロセスそのものを意味しています。日本人はもちろん、外国人も同様のプロセスに則って、国籍を問わず、同じ育成の基準を持つ事が、日本の企業には必要ではないかと思います。残念ながら、日本はここまでに至っていないのが現状です。実際に、周りを見渡して頂ければお分かりになるかと思いますが、ほとんどの参加者の方々が日本人の男性ですよね。女性は少数で、外国人はあまりいないでしょうか。これはちょっと偏っていると思いませんか。ただし、誤解して欲しくないのは、このような状況を否定しているのではなく、このような現状を知って欲しいということです。従って、皆さんの今後のタレント・マネジメントの為に必要なミッションとは、日本人の女性、外国人の男性・女性に対して、どのように会社の為に働いて頂けるかという、しっかりした基準・プロセスを構築することであり、これが最大の問題だと思います。

第三のポイントは、英語に対するコンプレックスです。私は人事コンサルタントの立場から、様々な企業とお話をさせて頂く機会があり、その中で「わが社はこれからグローバル・リーダーの育成を何とかしなくてはいけない。だから社員全員にTOEICを受けてもらい英語力の向上を図っている」という話をよく耳にします。しかし、そうではない。「Global Leadership does not come from a TOEIC score!」なんです。つまりグローバル・リーダーはTOEICスコアが高いからといってなれる訳ではないという事です。英語を勉強する事を100%否定している訳ではありません。皆様にお伝えしたいのは、英語を『勉強』するのではなく、英語を『使って』頂きたいという事です。理由は2つあります。1つ目は、もともと日本人は英語を義務教育として学んでいるので、文法などの基本的な知識は、既に備わっているという事。2つ目は、英語を話す自信が欠けているという事です。「間違えたらどうしよう」という不安を乗り越える事が大事です。そして、TOEICの為の勉強をしても、ROIが必ずしも上がるわけではないという事を、人事部の方に理解して頂きたいと思います。英語を『使って』いくことが、英語に対するコンプレックスが解消していくカギになるという事をご理解ください。

前述のグローバル・タレント・マネジメントは、人事部的課題ではありますが、一方で人事部だけではなく、グローバル人材をどうするか、我々のイノベーションはどうするかについては、経営者そのものが、どうすればよいかを考えなければいけません。つまりこれは経営に関する問題という事です。そして、人事部や経営者も含め、英語の語学力に関する議論はもう十分だと思います。英語はあくまでツールでしかありません。ただし矛盾するかもしれませんが、やはり英語力は大事である事は確かです。外資系の方々と日本の企業がミーティングをする際に、うまくコミュニケーションが取れない事があります。これは英語がうまく話せない事が理由としてあり、グローバルビジネスの場で英語を話すという事は大前提であり、先ほど申し上げたように意識の変換をする事が更に重要だという事を忘れないでください。

異文化について考えてみたいと思います。まず、私の異文化に対する考え方をご紹介します。私はアメリカで運転免許を取りましたが、その免許が切れそうになり、日本の免許に切り替えました。そして先日、初めて都内で車を運転しました。私は異文化に関する勉強していたので、日本人がルールを守る人種だという事を知っていましたし、実際にそうです。(ちなみに、ニューヨークだったら、信号が赤でも青でも、人は道を横断しますけれど…)しかし、その一方で危険性もあります。例えば、自転車です。特に「ママチャリ」と呼ばれる、お母さんが赤ちゃんや子供たちを乗せる自転車です。事故には遭わない自信があるのでしょうが、車の横を並走し、非常に危ないです。なぜこの話をするかというと、私が日本で運転免許を取得し、運転出来るのは、日本語能力でも異文化理解でもなく、本来のドライビングの基本が分かっているからです。つまり、異文化(交通ルールや習慣)さえ理解できれば、海外でビジネス(運転)ができるという考え方は違うという事です。ビジネスの基本を理解し、自分の強み、自分の技術、自分は何ができるか、まずそれを知り、強くしないといけません。そして海外に行って、現場を見て、何があるか、その現場への意識から、どう行動するかを考えます。その応用力が試される時にこそ、異文化への理解度が非常に重要になってくると思います。

最近、人事部を始め、様々な方々の中で、グローバル人材になる為には、まず英語、まず異文化、という精神的壁(ハードル)を作り、身構えていらっしゃる方が多い。しかしそれはちょっと違うと思います。例えば、グローバル人材の話題で議論になるのは、「中国人と一緒にどう働き、どう管理するか?」、「アメリカ人に対しどう交渉するか?」といった内容です。国籍で分けるよりも、まず「自分が何を言いたいか」、「自分のポイントは何か」、「自分の強みは何か」、「自分の会社は何を目指すべきか」を明確にするべきです。しかし残念ながら、人事部でさえその点を理解していない方が多い。「海外拠点の有無」、「海外との売上比率」などは分かっている方もいますが、「会社の強み」、「会社の目標」が分からない、また自分自身の役割や会社の現状を分かっていない方が多い。つまり、グローバル化や、グローバル人材の育成を推進していく為には、『外のことをまず考えて、外のために我々はどうするか』ではなく、『我々の強みを考えて、海外で我々が日本の会社としてどういう価値を出すか?』を第一のスタート地点として考えるべきだと思います。

次に、グローバル・リーダーについてお話させて頂きますが、その前に、組織について触れたいと思います。私は人事コンサルタントという仕事柄、グローバル・コミュニケーション、特にグローバル・コラボレーションというテーマをよく扱っており、実際の経験から、それをご説明させて頂きます。私は以前、アメリカで、日系企業向け人事コンサルティングをしていました。その当時は、(日本にある)本社との関係はほとんど無く、本社とのコミュニケーションは専ら駐在員の方々が担当していました。しかしこのような体制は、現在のグローバル化の時代には通用しなくなってきています。今後は、より密な情報交換を促すためにも、駐在員だけではなく、現地の営業や開発スタッフが、日本本社の方とメールやビデオ会議などを通じ、直接コミュニケーションを図りつつ、ビジネスを構築する必要があります。つまりこれがグローバル・コラボレーションです。実は20年前にも同様の課題はありましたが、20年前と比べると現在はビジネス環境に根本的な違いがあると思います。それは、コミュニケーション技術の飛躍的な進歩です。パソコンが1台あれば、グローバル会議が出来ますし、更にスカイプなどで無料会議も可能です。世界中、どこに居ても、人とコミュニケーションが取れます。このようにコミュニケーションの手段は格段に進歩しましたが、それでOKかというと、そうではありません。コミュニケーションの先に何があるか?それを考える事が問題解決に繋がります。

コミュニケーションとは、つまり情報共有です。情報を共有する事で、目の前にある問題の解決を目指します。
そこで必要なのが、グローバル・コラボレーションです。そして、抱えている問題の再発を防ぐ為に、グローバルな組織としてどのように対応すべきかを多くの企業が議論し始めています。これは日本企業だけが直面している問題ではなく、海外企業も抱えている問題です。残念ながら、欧米企業と比較した場合、日本企業の方が遅れていると言わざるを得ません。何が遅れているかというと、日本企業の(特に本社の)スタッフが日本人だけだという事です。外国人採用もはじめてはいますが、その数がまだまだ少ない。更に、日本企業の(日本)本社では、海外でどのような人財がいるのかをしっかりと把握できていない。日本企業と海外企業のグローバル・タレント・マネジメントを比較すると、根本的な違いがあるように感じます。それは、海外企業では採用時からグローバル・タレント・ポテンシャリーのある方を採用している点です。日本企業では新卒採用、中途採用がありますが、海外企業では例えばGE、KPMG、最近はPanasonicも実施していますが、特別なプログラムで採用しています。例えばGEでは、2年間で各8か月のローテーション制度を3回実施。その後、アメリカにおいて、リーダーシップ、セールス・マーケティングの研修を2年間やります。採用前に誰をこの制度に入れるか決めていて、若手社員には採用後すぐにこのような経験をさせます。最近では日本企業も、このような制度を取り入れ始めましたが、残念ながらその対象は日本人がほとんどですね。更にその日本人を海外に送る場合は語学研修の為が多い。企業がそのような制度を社員に提供するのは、ある意味では良い事ではあるのですが、今頃『語学研修』ではもう遅いです!

今後、日本企業がグローバル・タレント・マネジメントを実施していく為には、まず、採用前から特別なプログラムを作り、場合によってはグローバルで、もしくは日本国内で外国人採用を積極的に推進していく必要があります。その際に、注意しなければならないのは、実際にどのようなプログラムで外国人採用を実施していくか、しっかりと確認する事です。例えば、外国人を採用する際に、特別な戦略があるかという事です。つまり、外国人採用は経営的な戦略とリンクしているかという事です。外国人労働者と日本人労働者を「差別」してはいけませんが、しかしある程度の「区別」は必要だと思います。外国人労働者は、そもそも海外から来て、家族は違う国に居て、教育文化も異なっている場合がほとんどです。日本人と全く同様な採用制度を当てはめる事は無理があるのではないでしょうか。外国人と日本人が異なる点を、会社側がしっかりと見極める事が重要です。彼ら(外国人)を理解し、長期間に渡って雇用する為に、彼らの特徴を「区別」する。これは、日本における企業のグローバル化で直面する課題であり、また、これを熟考することが様々な人材にまつわる  諸問題解決の糸口ではないかと考えています。時間もなくなってまいりましたので、本日の「国内外のグローバル人材育成の現状」についてのお話を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

ブライアン シャーマン(Bryan Sherman)

ブライアン シャーマン(Bryan Sherman)

・所属・役職
グラマシー エンゲージメント グループ株式会社 代表取締役
グローバル組織人事コンサルタント
 
 
・略歴
米国ニューヨーク市人事コンサルティング会社にて日系企業(NY・LA)を対象に
人事コンサルタントとして従事。
その後同地にて米国住商情報システム株式会社人事総務部長を経て、
来日後は株式会社ファーストリテイリング人事部にてグローバル人事業務に参画。
欧米露アジア拠点の人事マネージメント業務に従 事。米国ニューヨーク州出身。
Senior Professional Human Resources (SPHR), Society of Human Resources 、
産官学連携トランスナショナルHRM研究会 会員
 
グラマシー エンゲージメント グループ株式会社Website http://www.gramercyengagement.com/

・講演情報
外国人社員の活かし方を英語で学ぶ。英語de人事
多国籍人材を活かすためのコミュニケーション論
 
■日時:2011 年12 月10 日(土)10:00~17:00
■会場:人事の大学本校
    東京都新宿区高田馬場4-18-2 冨久正ビル2 階
■受講料:42,000 円(消費税を含む)
 

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