| 2007年8月8日 UP ニューチャーネットワークス・文 |
( Q )将来性のない事業を見分けるには
企業の悩み:
先日、経営会議に上申する中期経営計画骨子について議論したのですが、上司の経営企画室長は、「わが社の強みは“現場”が生み出す組織能力だ。創業時からのモノづくり精神を忘れずに、全社が一丸となって事に当たらなければ、市場に淘汰される」とことあるごとに我々に言っています。たしかに、我々メーカーにとって現場や組織能力が重要なのは理解しているのですが、“株主資本主義”がわがもの顔に振る舞う今日の経営環境において、現場力を含む組織能力とは、具体的にどのようなことなのでしょうか?
繊維メーカー最大手T社のY社長の話をご紹介します。
「当社は、度重なる不況や輸入自由化の影響により、従来の合成繊維事業に限界を感じてきました。 1970 年代に自社の技術を生かすため、炭素繊維の事業化に踏み切りました。当時は、ゴルフ用カーボンシャフトくらいしか用途がなく、市場も限られていましたが、その後、産業用の新素材としての認知が高まると、競合他社も参入し始めました。
2000 年頃は、日本の繊維メーカー各社の過度な設備投資および低価格を売りにした欧米や台湾メーカーの増産により供給過剰となり、当社も炭素繊維事業が赤字に転落しました。炭素繊維事業は、当社の技術蓄積の結晶でもあり、また炭素繊維事業を支える中核となる技術やノウハウは今後も維持するべき組織的な強みや能力のような気がしますが、なかなか確信が持てません。自社にとって欠かせない組織的な強みや能力をどのように見極めればよいのでしょうか?」
キーワードその1 コア・コンピタンス
日本の多くの企業は過去において、多くの企業が多角化に失敗して新規事業から撤退し、業績を悪化させました。例えば、鉄鋼メーカーが手がけた、本業とかけ離れた新規事業のほとんどは、残念ながら失敗であったといわざるをえません。他社にはない独自の強みで他社と差別化できなければ、競争優位性を構築することはできず、新規事業が成功する確率は低くなります。
そこで、自社のコア(中核)となるコンピタンス(能力や技術)を明確化して、企業の独自性と競争優位を確立する「コア・コンピタンス経営」という考え方が日本でも定着しつつあります。コア・コンピタンス経営とは、著名な経営学者であるゲーリー・ハメルト氏と C.K. プラハード氏が提唱している経営コンセプトです。コア・コンピタンスと似たような概念として、「ケイパビリティ」というものがありますが、企業固有の組織的な能力という点では共通です。

企業の持続的競争力を階層的に考えると、図1のように表されます。図の上から下に、表層的でアウトプットに直結するものから、深層的でアウトプットを生むための基盤となるものが位置づけられています。具体的にいうと、最も表層的な成果は利益などの「財務成果」です。その下に、商品の競争力を表す市場シェアなどの「市場成果」があります。
このような市場成果を生み出す基盤として、開発した商品の機能および商品開発や製造の効率といった「組織成果」があります。そして、最下層に組織成果を高めるための基盤としての「組織能力」があります。コア・コンピタンスとは「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義されますが、企業の競争力を階層的にとらえた場合における組織能力こそがコア・コンピタンスになります。
企業経営の中で、各階層にどのように優先順位をつけるのかは、さまざまな議論があります。また、企業がおかれている環境によっても変わってきます。しかし、企業が自らの能力軸で勝負するということは、いったんその能力軸で優位性が確保された場合、成果や強みが恒常的に獲得できることを意味します。市場環境が激変し、ある商品の売上が急に落ち込んだり、マーケット自体がなくなってしまったとしても、組織能力に立脚していれば、その優位性を維持することで、これらの変化に対応していくことができます。
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