| 2007年12月26日 UP ニューチャーネットワークス・文 |
( Q )ステークホルダーとうまく「利害調整」し、ビジネスを進めるためには?
企業の悩み:
わが社は、日本市場で長年活動してきましたが、日本国内の需要の減少で業績が伸び悩み、海外市場に活路を見出すしかない状況に追い込まれてきました。経営資源の海外市場への大胆なシフトを方針として掲げ、今後の成長が見込めそうな新興国を中心に拠点を設置し、国内で活躍していた若手のエース人材を投入するなど、それなりにがんばってはいるのですが、どの進出国においても、いわゆる「交渉事」がなかなかまとまらず、計画どおり物事が進みません。わが社は、今後どのようにして、「利害」を調整し、ビジネスを円滑に進めるための交渉力を習得したらよいでしょうか?
プロ野球S球団のオーナーの側近の話です。S球団の側近X氏は、同球団に所属するスタープレイヤーM投手の大リーグ移籍を容認した当時のことを次のように振り返ります。
「M投手の移籍を認めたくないのが、我々の本音だった。しかし、来年M投手がFA権を行使してしまえば、移籍金も手に入らなくなる。またM投手の夢であった大リーグ入りを妨害するように世間から見られるのも、高校球児への利益供与問題で散々叩かれた当球団としては得策ではない。結局、我々はM投手を失ったものの、M投手に過去8年間支払った年俸額でもお釣りがくるほど多額の移籍金を手にすることができた。長年わが球団で活躍してくれたM投手にも感謝され、結果としては良かったのではないか」
その後M投手は大リーグでも大活躍し、移籍先の球団の優勝に大きく貢献しました。
交渉を上手く進めるためには、まず自社(自分)が置かれている立場を正しく認識しなければなりません。交渉の対象となるアジェンダ、論点、争点を整理するためには、次の2つの戦略キーワードが特に重要です。
BATNAとはBest Alternative to a Negotiated Agreementの頭文字をとった言葉であり、最善の代替案という意味です。「バトナ」と略して使われることが一般的です。BATNAを用意しておくと、「自分にはほかの選択肢があるため、ここで合意する必要はない」と交渉相手にプレッシャーを与えることが可能になります。また、合意案をBATNAに照らしていれば、不利な条件での契約締結を未然に防ぐこともできます。つまり、BATNAは、それを下回った時点で交渉を中止(場合によっては決裂)させた方が、自分にとっての利益が大きいという1つの基準になるのです。
もう1つはZOPA (Zone of Possible Agreement) であり、交渉可能価格帯と訳されることが多いです。価格交渉においては、売り手と買い手のZOPAが重なる部分がなければ契約が成立する余地は少なくなります。売り手と買い手の限界価格を知れば、交渉相手の調査コストを必要最小限度に抑えることが可能です。交渉の前には、これらを十分に理解し、検討する必要があります。
さらに交渉を有利にするのは、コミットメントです。自分がこれ以上は絶対に譲歩しないという一線を引き、それが交渉相手に伝われば、相手の譲歩を引き出しやすくなります。しかしこのコミットメントは、ブラフ ( 脅し ) ではなく、相手が心底から信用できるものでなくては意味がありません。
そして、交渉が合意に至ったとき、どちらも利益を得ている状態( win-win )が理想です。そのため、 win-win 型の提案をすれば、合意に至る可能性が高くなります。交渉では、合意によって得られる利益が具体的に特定でき、客観的に評価できなければなりません。
以下では、先ほど登場したM投手と別ケース(N野手の失敗)を使って、両選手の交渉の進め方について再度検証してみることにしましょう。
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