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プロフィール:高橋透
ニューチャーネットワークス:高橋透上智大学経済学部、旭硝子(株)コンサルティング会社を経て  現在ニューチャーネットワークスグループ代表。  事業戦略、新事業・成長戦略、アライアンス戦略、役員、経営幹部研修  などに従事。主な著書、訳書に「事業戦略計画のつくりかた」「図解技術  マーケティング」「GEワークアウト」など
 2007年9月19日 UP
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【連載7】日本企業の新たなマネジメントモデルへの脱皮(2)パワーアップによる「価値共創型」「創発型」経営の実現
高橋 透:文
 
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日本企業競争力の原点「すり合わせ」

 

 ここ10年世界をリードしてきた米国の情報産業、金融産業などは、社内外の標準的なモジュールを組み合わせることで、市場の変化に対する機動力を高めつつ、リスクを下げるという戦略をとっています。また欧州では、日本的な機能重視の精密なモノづくりよりも、消費者から見た意味を重視した高いブランド力と高価格戦略で成功している企業が多いと言えます。


 一方、日本企業はどうでしょうか。東京大学経済学部教授で、同大学のものづくり研究センター長である藤本隆宏教授は、これまでの日本企業の強みは“インテグラル型”、つまりは細かな顧客の個別仕様に対する徹底した“すり合わせ型”にあり、つまり日本の製造業の強さの原点は現場の設計力、製造力にある、とおっしゃっています。


 確かに自動車、電子部品、スペシャリティケミカルなど日本のものづくり企業のいくつかは、設計、製造段階での「すり合わせ」をベースに成功してきました。一方では、閉じた範囲での開発設計、製造段階での「すり合わせ」に依存しすぎ、業界または業界を超えた大局的な見方での戦略構想策定に弱い傾向もあります。その結果、企業によっては、すり合わせによる各段階の経営資源投入が必ずしもシェア拡大や製品価格に反映されないことも多くなってきました。


 藤本教授も「日本企業がすり合わせ力を維持できなくなったら終わりだが、一方では経済や産業の全体のアーキテクチャーを俯瞰した『位置取り戦略』を見誤ることも危険である」と厳しく警告されています。


図1:アーキテクチャーの位置取り戦略

トヨタの強みの本質は創発型プロセスを通じた「進化能力」にある

 

 さて、そこで日本のモノづくりの強みについて、モノづくりのお手本とも言えるトヨタ自動車に関する藤本教授の研究をお借りして、もう少し考えてみましょう。


 藤本教授は、トヨタをインテグラル型ビジネスのモデルとし、同社の強さの源泉を3つの要素に分析して、(1)統合能力、(2)改善能力、(3)進化能力としました。そのうち(3)の「進化能力」こそが、トヨタの本質的強みであると強調されています。


 ここでの「進化能力」とは、トヨタの現在の強みのベースとなる仕組みや企業風土そのものであるカンバン方式や改善手法を生み出し、それらを修正しながら実践する能力、つまり組織的学習能力のことです。その「進化能力」の原点はどこにあるのでしょうか。藤本教授がトヨタを歴史的に調査した結果、進化能力とは「創発的なプロセス」そのものであると分析します。


 つまり「多能工」や「重量級の開発リーダー」「部品メーカーの開発参加」などは、はじめからトヨタが現在のようなモデルを持ってトップダウン型で展開したのではなく、その時代の混沌とした状態における制約条件や失敗などを取り込みながら、常に現場を起点とし、組織全体に粘り強く横展開して作り上げたものだというのです。つまり、一つの「創発」のプロセスによってでき上がったシステムなのです。


 局所で見れば「すり合わせ」的なものが強みのトヨタですが、その根底では、予測不可能で、制約条件が多い市場の中で、トヨタにかかわる社内外のメンバーが、追い詰められながらも学習し続け、新たな仕事のやりかたを「創発」するということが本質的な強みとなっています。これはトヨタに限らず、これまでの激変する社会経済環境の中を生き延び、長い間事業を継続してきた日本の大企業の根底には、このような「創発」的な因子が根強く存在しているのではないでしょうか。


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