VOL.2 価値共創の時代の新たな戦略企画手法「事業戦略パワーアップ」
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vol2:価値共創の時代の新たな戦略企画手法「事業戦略パワーアップ」
2007年5月16日UP

いまだ変革されてない「事業戦略企画プロセス」

 世界中でのインターネットの普及、資本市場のグローバル化、BRICSでの需要の急拡大──など、我々を取り巻く事業環境はここ10年で大きく変化した。ところが事業環境が大きく変化しているにもかかわらず、多くの企業でいまだ手つかずのことがある。それは「事業戦略企画プロセス」の変革ではなかろうか。


 「中期計画」「年度予算計画」「新製品・新事業開発プロジェクト」など、企業の中には「戦略企画力」が必要とされる場面は多い。街の書店をのぞけば、「マーケティング戦略」や「新製品戦略」「研究開発戦略」など戦略企画に関連する書籍であふれかえっている。しかし、企業での事業戦略企画はここ10年以上そう変わっていないのが実態だ。事業部の企画担当者が、事業部内の組織から積み上げられた予算数字とその付属資料として、“後付けの戦略”をとりまとめていくケースが多い。


 そこで今回は、日本企業の平均的な「戦略企画」の実態とその変革のストーリーについて、A社の事例を題材に考えてみたい。


A社の現状〜将来が見えない中での多忙感〜

 エレクトロニクス関連デバイスメーカーのA社は、業界2位。5,6年前に、早期退職による人員削減や不採算事業の売却など、大きな事業リストラを行った。ここ3年間は、デジタル家電需要の伸びにともなって、業績は順調に回復してきている。


 A社が業績回復したのは、顧客企業である大手家電メーカーに対して、製品仕様を徹底的にすり合わせ、継続したコストダウン努力を行ってきたためである。顧客ニーズの先取り、技術部門による積極的な提案、短期間での開発、少ない設備投資の中での効率的な生産、ジャスト・イン・タイムでの納入など、企業としての基盤力は従来よりもかなり向上し、営業、開発、製造などの現場も自信を取り戻しつつある。


 このような機動的な現場力の発揮による企業業績の回復の一方、会社の誰もが不安に感じていることがある。それは、会社が3年後5年後、どのような姿になっているかというビジョンが見えないことである。変化のめまぐるしいエレクトロニクス業界では、半年から1年後の状況は見えていても、1年以上先となると、顧客企業の大きなシェア変動の可能性もあり、デバイスの需要動向は不透明なのである。


 経営トップから現場の社員まで、顧客のオーダーに応える懸命な努力を続け、現在は仕事の充実感はあるが、将来への備えはほとんどできていない。その現れであろうか、最近開発部門での会議で、「中長期の開発テーマが見つからない」ことが問題視されている。


 それもそのはず、新事業開発担当はたった1人であり、それも兼務体制なのだ。5、6年前に研究部門が縮小されたため、研究所も事業が依頼したテーマを研究するだけで、将来の新しいドメインを切り開く事業探索、技術開発は全く行ってこなかった。最近のM&Aブームもあり、A社の社長は、M&Aを活用した事業戦略を考えることを指示しているが、A社はM&Aの経験も乏しく、実現まで時間がかかりそうなのである。


 こうした中期、長期のビジョンの欠如からくる会社全体の不安感は、毎年恒例の中期計画の見直しと予算策定の時期にピークに達した。


 A社の中期計画、年度予算は、事業部の企画担当者が、事業部内組織から積み上げられた予算数字とその“付属資料としての戦略”をとりまとめていくことによって作られていく。そして予算数字が足りない場合、事業部トップからおきまりのように “上乗せ分”の指示がくる。行き場のない“上乗せ分”は、ある時は営業、またある時には“開発”や“製造”に回り、何かの事情で誰かの所へ落ち着く。


 そこには戦略的な発想はほとんどない。事業の近い将来に関しては誰もが不安で、責任をとりたがらず、結果として、「計画未達組織」と「いつか責任を追求される人」が生まれてしまうのだ。戦後の創業者が持っていた挑戦的でイノベーティブな精神は、いま失われつつある。


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