今日の消費の現場では、嗜好が多様化し、さらにその勢いは増している。そのため企業は、さまざまなニーズとその変化に合わせて商品を提供できなければ、顧客の支持を得られず、市場での競争に勝つことができない。
歴史的に企業は、効率化、分業化の流れの中で画一的な方式やルールに従って活動する傾向がある。しかし、そのアプローチを続ける限り、今日の消費者とのギャップは広がるばかりである。消費者が多様だからこそ、企業で働く多くの人の意見や価値観をぶつけ合える多様性ある組織体でなければならない。
一方で、多く日本企業では、これまで日本人の男性社員の牽引によって成長してきたという意識が根強い。このことも多様な人材活用の妨げになっているようで、組織変革が進まない要因にもなっていると考えられる。
今回は、文具メーカー「 X 社」の事例を元に、ここ数年閉塞感が強くなっている業界において、新たな成長の原動力として女性の活躍を図ったケースを紹介したい。社内に刺激を与えて組織を活性化し、人の成長、組織の成長、そして実際のビジネス成果につなげていくこと。さらにこれを人材育成というアプローチで実現しようという取り組みについて考えてみたい。
1. X 社の現状
大手文具メーカー X 社で働く C さんは、 2 年前から商品企画部で幼児向け玩具を開発している。大学を卒業後に X 社に入社してからの 12 年間は、大手問屋に対する営業を行なってきた。そんな C さんが、商品企画部に移ったのは、 2 年前に受けたある研修がきっかけだった。その研修は、 X 社のダイバーシティ推進のポジティブアクションとして実施していた女性ビジネスリーダー研修であった。
X 社は、文房具を中心として、オフィス用品やカバンなどの製造・販売を手がけており、今年で創立 60 周年を迎えた。文房具業界では第 3 位の規模であるが、文房具市場は業界 1 位、 2 位で市場の 60 %を占める構造となっており、 X 社の市場シェアは 15 %程度である。文房具市場は成熟市場となっており、近年、単品ごとのヒット商品は出るものの、多くの商品の売上は低下している状況であった。 X 社では近年、大きなヒット商品を出せず、既存商品の改良や他社商品に追随する形での商品投入が中心となっていた。そのため、社内には閉塞感が漂い始めていた。
2.ではどうしたのか 〜女性の活躍を推進する〜
どうはじめたか 〜現場トップの思い〜
X 社の N 社長は現状を憂えていた。社内では、購入者としての「女性」は重視されていたが、社内での女性社員の地位は決して高くなく、仕事内容も制限されている。
先日、異業種交流に出席した N 社長は、最近他社が積極的に女性活用の施策を実施し、組織風土が変わり、これまでとは異なる視点での商品開発、営業活動が行っていると聞いた。そこで、人事部に対して、女性の活躍を推進するために、女性社員の育成の場、活躍の場としての研修の企画を依頼した。
どう企画を進めたか 〜事前の場〜
●ステップ1:全体の方向付け
(事務局の出番)
事務局の I 氏と F さんは、女性ビジネスリーダー研修の実施が、特定の女性社員の能力向上を図るだけではなく、この研修を受けた女性社員が自分の周りの組織、さらには、会社全体、業績、風土に対して、よい効果を波及させることが重要だと考えていた。そのためには、長期的な視点に立って、研修実施期間だけでなく、研修終了後にも研修生が組織を引っ張っていく仕掛けを作る必要があった。
●ステップ2:研修の企画
(事務局の出番)
研修を通じて X 社で活躍できる人材を育てるためには、どのような内容にし、その効果があらわれる仕掛けを作っていくか。既に女性リーダー研修を他社へのヒアリング、外部の専門家による意見を聞いて、 X 社の女性リーダー研修の骨子は下記のようにまとまった。
( 1 )知識学習:
「組織を引っ張るリーダー」として求められる経営の基本的な知識を身に付ける
( 2 )アクションラーニング:
女性が活躍する姿を X 社全体に示せるようなプロジェクトを研修で企画する
( 3 )経営トップのコミットメント
アクションラーニングを実践するために、経営トップによる実行のための明確な意思表示をしてもらう